激動の人生に暗雲が垂れ込めたのは、2022年のことでした。黄疸などの体調不良から検査を受けた結果、告げられた病名は「すい臓がんステージ4」。すでに他臓器への転移も見られ、医師から告げられた余命は「半年から1年」という非情な宣告でした。
しかし、世間を驚かせたのはその後の決断です。叶井氏は手術や抗がん剤治療といった標準治療を一切拒絶しました。抗がん剤の副作用によって日常の気力や味覚を奪われ、ベッドの上で弱り果てる時間を過ごすよりも、「残された時間を大好きな仲間と酒を飲み、美味しいものを食べ、仕事を続けて笑って過ごしたい」という極めて現実的で潔い意志を貫いたのです。
この壮絶な日々の本音は、著書『すい臓がんになったら手遅れです』をはじめとする闘病記に克明に記されています。延命のための治療に生活を捧げるのではなく、命の質(QOL)を最優先にしたその闘病スタイルは、医療関係者や終末期医療を考える多くの人々の間で議論を呼び、深い感銘を与えました。