伊香保温泉の象徴である「石段街」は、戦国時代(1576年頃)に武田勝頼の命によって整備された日本初の温泉都市計画がルーツとされています。365段続く中央の石段の下には温泉の配湯管(湯樋)が通り、左右には昭和から大正、明治の面影を残す旅館やお土産処、遊技場がひしめき合っています。
夕暮れ時、石段街の両脇に掲げられた提灯が一斉に灯ると、映画の中で夕暮れとともに看板に灯がともり、神々が船から降り立ってくる「湯屋街」の情景と完全にシンクロします。湯の花まんじゅうを蒸す湯気、射的場から響くコルク銃の音、浴衣と下駄で歩く温泉客の足音が合わさり、ノスタルジックな異空間を作り出しています。
石段街の中段に威風堂々と佇む老舗旅館「横手館」の存在も見逃せません。大正9年(1920年)に建てられた本館は、釘を一本も使わずに組み上げられた総檜造り・木造四階建ての国登録有形文化財です。複雑に入り組んだ階段構造、細かな格子窓、飴色に磨き上げられた廊下は、油屋の内部構造や従業員たちが駆け回る階層空間のイメージと見事な一致を見せています。