マスクの下のただれ顔に戦慄する一方で、観客を惹きつけてやまないのが演じる俳優本人の圧倒的なルックスとのギャップです。デッドプール=ウェイド・ウィルソンを演じるのは、カナダ出身の実力派俳優ライアン・レイノルズ。米ピープル誌が選ぶ「世界で最もセクシーな男」に選出された経歴を持つ、正真正銘のハリウッドトップスターです。
ライアン本人は、2009年の映画『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』で初めてウェイド役に抜擢されたものの、当時は口を縫い合わされ目からビームを出すという原作無視の改変を強いられ、深い苦杯を喫しました。そこから10年近くにわたり、自ら私財と情熱を投じて企画を温め直し、2016年の単独映画『デッドプール』で熱望していた原作準拠の映画化を成し遂げたという、まさに執念の立役者です。
製作現場の証言によると、ライアンは毎朝午前4時前にスタジオ入りし、顔全体から首元、頭部にかけて薄いシリコンピースを幾重にも貼り重ねる過酷な特殊メイクに耐え続けました。通気性が極めて低く皮膚がかぶれるリスクを背負いながらも、「このただれた素顔こそがウェイドの魂であり、痛みの象徴だ」と語り、代役スタントに頼りすぎることなく自らの表情筋で苦悩と狂気を演じきっています。
ビジネスパーソンとしても、英サッカークラブ「レクサムAFC」の買収・再建や広告制作会社の経営など多大な成功を収めており、パブリックイメージとしての「完璧なイケメン実業家」と、劇中で見せる「アボカド顔の破滅的アンチヒーロー」という二面性が、キャラクターの奥行きを一層引き立てています。