長年にわたりラーメン界の変遷を記録してきたラーメン評論家の石神秀幸氏は、この現象を「旨味の構造的パラダイムシフト」と分析する。グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果に頼ってきた旧来の出汁文化に対し、コハク酸が主成分である貝類を軸に据える試みは、日本人の味覚のフロンティアを押し広げたと同氏は指摘する。
一方、日本全国を食べ歩き、一般社団法人日本ラーメン協会の設立にも深く関わった大崎裕史氏は、貝出汁ラーメンというジャンルの成熟度に太鼓判を押す。アサリやシジミ、ハマグリで培われた出汁抽出のノウハウが蓄積された結果、最も扱いが難しいとされた牡蠣を完璧に飼い慣らす技術が整ったという見立てだ。業界を代表する両氏の見解は、牡蠣の躍進が必然の進化であったことを雄弁に物語っている。