自宅にある鍋がIHで使えるかどうかを判別する際、最も手軽なテクニックとして知られているのが「磁石を底面に近づける方法」です。基本原則として、磁石がピタッと底裏にくっつけば、鉄や磁性ステンレス(18-0ステンレスなど)が含まれており、IHで反応する可能性が極めて高いと判断できます。
しかし、取材現場や消費者トラブルの相談事例を検証すると、IH鍋磁石がつかない原因には金属特有の配合比率が絡んでいます。高級鍋に多用されるオーステナイト系ステンレス(18-8や18-10ステンレス、SUS304など)は、耐食性や防錆性に優れるものの、金属組織の特性上、基本的には磁石が付きません。底面に磁性を持たせる特殊加工が施されていない場合、磁石が付かないため標準的なIHでは加熱できないケースがあります。
さらに「磁石が付くから100%安心」と過信するのは危険です。底が薄すぎる鍋や中華鍋のように丸みを帯びた鍋は、磁石が付いてもセンサーが適切に検知できず、空焚き防止機能の誤作動や異常過熱を引き起こすリスクを孕んでいます。ここで決定的な判断基準となるのが、一般財団法人製品安全協会が定めるSGマークIH認定基準です。
SGマーク(Safety Goods)が付与された調理器具は、厳格な検査基準をクリアしています。特にIH用認定基準(SG CH・IHマーク)では、底面の平らさ(常温時および加熱時の反りが0.3mm以下)、底面の板厚、耐久性、急冷時の熱衝撃耐性などが厳密に規定されています。パナソニックや日立といった大手家電メーカー各社の公式取扱説明書でも、「SGマーク付きの鍋、またはメーカー推奨のあっせん鍋を使用してください」と明記されており、トラブルを未然に防ぐ最大の防壁となっています。