インターネット上の掲示板やSNS、知恵袋の投稿を検証すると、「自分でカートリッジを取り寄せて安価に直せた」という喜びの声がある一方で、「途中で外れなくなり水道を丸一日止める羽目になった」「シンク下の配管を壊してパニックになった」という悲痛な叫びも後を絶ちません。現場取材で浮き彫りになった最大の難関は、経年劣化に伴う「金属と水垢の電食・カルキ固着」です。
KXS870J-1Tの構造上、カートリッジを固定している真鍮製または樹脂製の大型リング(カートリッジ押さえ・六角カバーナット)を回転させて外す必要があります。しかし、10年近く水道水にさらされ続けた水栓内部では、炭酸カルシウムが接着剤のように隙間に入り込み、通常のレンチではビクともしないほど固着しているケースが頻発します。
ここで初心者が犯しがちな致命的ミスが、「大型のパイプレンチで力まかせに回す」ことです。水栓の胴体(ボディ)自体が共回りしてしまい、カウンター裏側で固定されている給水管・給湯管の銅管やフレキシブルホースをねじ切ってしまうのです。配管を破断させれば、床下への大量浸水や、壁内配管の引き直し工事という数十万円規模の損害賠償・補修費用に発展します。現場の配管工が「固着がひどい個体は分解を諦め、水栓ごとグラインダーで切断して交換する」と証言するように、事態は決して単純なボルト締め作業ではありません。