セーターに穴があいた際、多くの人がやってしまう最大の失敗が「穴の周囲を普通の玉結び糸でギュッと巾着のように絞って縫い縮めること」です。これを行うと、ニット特有の伸縮性が失われるだけでなく、生地表面に不自然な引きつれとしわが生じ、かえって穴の存在を強調してしまいます。
ニット穴あき補修を自分で直す方法の基本原則は、「失われた編み目(ループ)を別の糸で擬似的に再構築すること」に尽きます。特に編み目が整っているハイゲージやミドルゲージのニットにおいて、セーター穴補修の目立たない縫い方としてプロも推奨するのが「メリヤスステッチ(編み目トレース)」と呼ばれる手法です。
補修を成功させる決定的な裏ワザは、「まったく同じ色の糸をどこから調達するか」という点にあります。市販の洋裁糸では、どれほど色を合わせてもウールの質感や光沢が異なり、補修跡が浮いてしまいます。そこで活用すべきなのが、製品自体の裏側にある縫い代部分の余り糸や、内側の品質表示タグ(洗濯ネーム)の縫製に使われている共糸です。タグの端をわずかに解いて数センチの糸を採取するか、購入時に付属していた補修用カセ糸を使うことで、素材感と染色が100%一致する完璧な補修が可能になります。
具体的な手順は次の通りです。まずニットの裏側から、穴の周囲で解けかけている上下の編み目ループを細い針ですくい取ります。次に、針に通した共糸を使い、本来あった「V字型」の編み目をなぞるように、左右の編み地を渡していきます。このとき、糸を引っ張りすぎず、周囲の編み目のテンション(張り具合)とまったく同じ緩やかさを保つことが、仕上がりを透明化させる最大の秘訣です。