金色堂の美しさは、単なる金箔の輝きにとどまりません。須弥壇や巻柱を装飾する工芸技術には、平安時代後期の最高峰の粋が集結しています。
特筆すべきは、南洋の海でしか採れない夜光貝を用いた螺鈿(らでん)細工です。漆に金粉を蒔く蒔絵(まきえ)の技術と精緻に切り出された貝片が組み合わされ、孔雀や宝相華(ほうそうげ)の文様が光の角度によって虹色に変化します。都の文化を単に模倣するのではなく、大陸や南方との交易ルートを掌握していた奥州藤原氏ならではの国際色豊かな美意識が結実しています。
また、金色堂を守り継いできた「覆堂(ふくどう)」の存在も見逃せません。金色堂は風雨による劣化を防ぐため、鎌倉時代から建屋ですっぽりと覆われてきました。境内には、かつて室町時代以降に金色堂を保護していた木造の「旧覆堂(重要文化財)」が移築保存されており、現在は1968年に建設された耐震・空調完備のガラス張りの「新覆堂」の内部で厳重に保護されています。時代の変遷とともに文化財を守り抜いてきた人々の熱意を物語る構造です。