ネット上で「上小阿仁村」の名が広く知れ渡る契機となったのは、2007年から2012年頃にかけて集中的に発生した上小阿仁村国保診療所における常勤医師の相次ぐ辞職劇でした。
当時、全国的な医師不足に悩む中、公募などに応じて僻地医療へ志高く赴任した歴代医師たちが、わずか数か月から数年で次々と離任。その際、一部メディアが「村民からの嫌がらせ」「モンスターペイシェントによるバッシング」とセンセーショナルに報じたことで、5ちゃんねる(旧2ch)をはじめとするネットコミュニティを中心に「医者を追い出す恐ろしい村」「現代の八つ墓村」といった過激な言説が一気に拡散しました。
報道各社の取材や当時の記録によると、辞職の引き金として以下のような出来事が取り沙汰されました。
- お盆や休日に休診案内を出した際、「平日以外に休むな」「医師の自覚が足りない」と誹謗中傷を受ける
- 自宅の庭にゴミを投げ込まれたり、嫌がらせのビラを貼られたりしたという告白
- 夜間や休日の時間外診療を断ると、執拗な抗議電話が寄せられる
- 「村長派」「反村長派」という政治的対立に巻き込まれ、医師が孤立無援の立場に追い込まれる
こうした断片的なエピソードがネット上で増幅され、「上小阿仁村はやばい」という強固なパブリックイメージが形成されていきました。