ヘチ釣り(へちづり)の「ヘチ」とは、船着き場や堤防の「縁(へり)」や「端」を指す言葉です。沿岸部のコンクリート護岸や岸壁には、フジツボ、カラスガイ(イガイ)、小型のカニなどが無数に生息しており、チヌをはじめとする沿岸魚にとって格好の捕食ポイントを形成しています。
ウキフカセ釣りのように沖合へ仕掛けを遠投してコマセ(撒き餌)で魚を寄せるスタイルとは対照的で、ヘチ釣りは「すでに壁際についてエサを待っている魚」の目の前へ、付着物と同じエサを自然に届けるアプローチをとります。仕掛けが着底するまでのわずかな落下時間、あるいは壁面に付いた貝をハミに来ている魚のタナ(遊泳層)にエサが同調した瞬間、一気に生命感がロッドへと伝わります。
余分なウキや重いオモリを付けず、道糸とハリス、極小のハリとオモリのみという極限まで削ぎ落とされた仕掛けゆえに、海中の状況や魚の捕食行動が克明に伝わってくるダイレクト感こそが、この釣りの最大の魅力といえます。