有一郎が生前、弟に対して言い放っていた「無一郎の無は無能の無」「無意味の無」という冷たい言葉。しかし、臨終の間際に有一郎自身の口から語られた真意は、180度異なるものでした。
「本当は分かってたんだ。無一郎の無は、“無限”の“無”なんだ」
有一郎は弟の底知れない優しさと可能性を誰よりも認めており、それゆえに過酷な世の中でその優しさが弟を破滅させることを極度に恐れていました。「無」という言葉で弟の自尊心を縛りつけ、危険な剣士の道へ進ませまいとしていたのです。この呪縛の言葉は、最期の瞬間に弟の可能性を全肯定する祝福の言葉へと昇華されました。
記憶を失った無一郎がのちに霞柱となり、上弦の伍・玉壺を単独で討ち果たすことができたのは、この兄の遺言が魂の奥底で覚醒のトリガーとなったからに他なりません。