東京の夏の代名詞といえば、約2万発の光が漆黒の夜空を裂く隅田川花火大会だ。今年、警備体制のさらなるデジタル化とドローン誘導の実装により、動線計画に大幅なアップデートが加えられた。第一会場の桜橋下流から第二会場の駒形橋下流にかけての混雑率は例年通り極限に達することが予想されているが、関係者筋から得た最新の運行ダイヤグラムと歩行者動線の再設計情報によれば、勝敗を分けるのは「午後3時の退避ルート選定」にある。
観光産業が記録的な数値を更新するなか、浅草駅や押上駅の改札周辺は夕方前には身動きが取れなくなる。そこで視点を変えたい。地元住民の間で密かに共有されている汐入公園の南端エリアや、東武スカイツリーラインの鐘ヶ淵駅から徒歩でアプローチできる土手沿いは、仕掛け花火の全景を視界いっぱいに捉えつつ、終演後の凄絶な群衆雪崩からいち早く抜け出せる戦略的スポットだ。打ち上げ開始の合図とともに響き渡る轟音を、静寂と適度な余白のなかで受け止める贅沢は何物にも代えがたい。