セレクトセールの会場は、独特の緊張感に包まれる。一瞬の判断が数千万円、時には億単位の資金を動かすその競りの場で、伝説の馬主が見せる眼力はまさに神業と呼ぶにふさわしい。日本最大のセリ市である「馬主・競走馬セレクトセール」において、小柄でまだ細身だったディープインパクトの血統と歩様の中に秘められた天性の柔らかさを見抜いたエピソードは、今や競馬界の語り草だ。
血統表の数字や馬体の容姿だけに頼らず、馬が放つ「佇まい」や「体幹の強さ」を感じ取る直感。キングカメハメハやアパパネ、ソダシの獲得劇を見ても、単なる偶然ではなく確固たる美学と基準が存在する。主戦を務めた武豊騎手との強い信頼関係も、名馬たちの能力を最大限に開花させる不可欠な要素であった。