佐野浅夫が演じた光塯の最大の特徴は、圧倒的な親しみやすさと深情けにあります。先代たちが醸し出した徳川御三家としての重厚な権威感とはひと味異なり、旅先で出会う農民や町人の苦悩に自ら足を踏み入れ、同じ目線で胸を痛める姿が視聴者の胸を打ちました。
劇中で見せた溢れんばかりの涙から、親しみを込めて「泣き虫黄門」と称されることも度々ありました。しかし、その涙は決して弱さではありません。弱きを助け悪を挫く世直し旅の中で、市井の人々が抱える悲哀を誰よりも理解していたからこその感情露呈だったのです。助さん・格さんとの軽妙な掛け合いや、悪代官を諭す際の慈悲に満ちた言葉遣いは、視聴者に大きな安心感を与え続けました。