手塚治虫の筆致は、人間に優しくない。いや、人間という存在をあまりにも客観的に見つめすぎている。「鳳凰編」における我王の苦悩や、「異形編」で描かれる終わりのない時のループは、読者に「因果応報」の恐ろしさを骨の髄まで叩き込む。
どれだけあがいても、運命の歯車から逃れることはできない。悪人は相応の、あるいはそれ以上の苦しみを受け、善人であっても容赦なく時代の濁流に飲み込まれていく。この徹底したリアリズムと冷徹な視線が、ハッピーエンドに慣れ親しんだ読者の心を深く抉る。読後に残るのは、爽快感ではなく、重苦しい沈黙と自己への問いかけだけだ。