ドライバーがBレンジを使うべき最大の理由は、山道や峠道、高速道路の長い下り勾配における「ブレーキ効力喪失事故の防止」です。
長い下り坂でDレンジのまま走行すると、車速がどんどん上昇するため、フットブレーキを頻繁に、あるいは長時間踏み続けることになります。この状態が続くと、ブレーキ周辺で以下の2大トラブルが発生します。
- フェード現象:ブレーキパッドやライニングが連続使用によって過熱(300℃〜500℃以上)し、摩擦材から発生したガスがディスクとの間に膜を作って摩擦力が著しく低下する現象。
- ベーパーロック現象:摩擦熱がブレーキフルード(作動油)に伝わり、オイル内部に気泡(蒸気)が発生。ペダルを踏んでも油圧が気泡を圧縮するだけでブレーキキャリパーに伝わらず、突然ペダルが床まで抜けてブレーキが効かなくなる現象。
JAF(日本自動車連盟)が実施した降坂テストの公開検証データによると、標高差のある山岳道路(約8kmの連続降坂路)をフットブレーキのみで下った車両は、ディスクローターの温度が400℃近くまで急上昇し、制動フィーリングの明らかな悪化が確認されました。一方、エンジンブレーキ・Bレンジを併用して下った車両では、ローター温度の上昇が150℃前後に抑えられ、安全な制動力が維持される結果が示されています。
SNSや大手自動車Q&Aコミュニティでも、「箱根の山道でDレンジのまま下り続けたら車外から焦げ臭いにおいが立ち込めて焦った」「Bレンジに入れたら速度が一定に保たれ、フットブレーキに軽く足を添えるだけで安心して下りきれた」という実際の体験談が多数報告されています。