ネット上では「作者は子どもを怖がらせるために描いたのではないか」という極端な憶測も見られますが、作者である絵本作家・のぶみ氏のメディア出演や公式インタビューを紐解くと、制作意図は異なる場所にありました。
のぶみ氏は制作当時、「育児ノイローゼやワンオペ育児で追い詰められている母親たちを救いたい」「命の尊さと親子の絆を再認識してほしい」という動機を語っています。絵本作家として300作以上の著作を手掛けてきた同氏が得意とするのは、読者の感情をダイレクトかつ劇的に揺さぶる手法です。本作においても、「母親の死」という極限状態をあえて設定することで、日常のありがたみを逆説的に際立たせるというドラマ的演出が採られました。
しかし、この「大人向けのエモーショナルな演出手法」をそのまま絵本というフォーマットに落とし込んだことが、児童文学の専門家や教育者との決定的な認識のズレを生む結果となりました。絵本は本来、子どもの未発達な認知や心理を最優先に設計されるべき媒体であるため、大人のカタルシスを目的化した構成が激しい反発を招いた要因と言えます。