かつて日本の焼肉は、カルビやロースを無煙ロースターで豪快に焼き、ビールとともに楽しむ大衆的なスタンスが主流でした。その潮流に決定的なパラダイムシフトを起こしたのが、よろにくの創業者・桑原秀幸氏(通称Vanne氏)です。桑原氏がメディアの特別インタビューや業界誌で一貫して語ってきたのは、「焼肉を日本料理の懐石や割烹と同じ次元のコース料理に高める」という明確なビジョンでした。
同店が成し遂げた最大の功績は、肉の部位ごとに異なる脂の融点や繊維の太さに着目し、それぞれに最適なカッティングと味付けを体系化した点にあります。前菜のユッケから始まり、塩焼き、タレ焼き、名物のシルクロース、ザブトンのすき焼き、そしてトリュフを使った贅沢な締めや洗練されたかき氷に至るまで、ひとつの物語のように構成された「肉の起承転結」は、まさに焼肉の概念を覆した新世代の肉割烹そのものです。現在では全国の高級店がこぞって模倣するこの提供スタイルですが、本家が持つ細部へのこだわりは依然として他の追随を許していません。