素材の姿をありのままに活かす発想の源流をたどると、料理研究家の土井善晴氏が長年提唱してきた「一汁一菜」や、無理をしない台所仕事の哲学に重なる。NHKの『きょうの料理』でも、丸ごとのピーマンをじっくり素焼きにして甘みを引き出すレシピが紹介されるたび、視聴者の間で大きな共感を呼んできた。
きれいに種を取り去らなければならないという義務感は、いつしか私たちが自分で作り出した思い込みに過ぎないのかもしれない。食材の個性を丸ごと受け止める土井氏の柔軟なまなざしは、過剰な手間を省き、素材そのものの生命力をいただくという家庭料理の原点を鮮やかに思い出させてくれる。