膝関節は「関節包」という強固な袋で包まれており、その内側を覆う「滑膜」から、ヒアルロン酸やタンパク質を豊富に含んだ関節液が分泌されています。正常な膝であれば、関節液はわずか1〜3ml程度しか存在せず、軟骨に栄養を供給しながら摩擦を減らすクッションの役割を果たしています。
しかし、何らかのきっかけで関節内に物理的負荷や病的な刺激が加わると、滑膜が強い炎症を起こします。火災が発生した現場にスプリンクラーが作動するように、身体は患部を冷却・保護しようとして関節液を過剰に産生します。さらに、炎症によって滑膜の吸収機能が低下するため、関節包内に20〜50ml以上、重症例では100ml近くの液体が急速に貯留します。これが関節水腫の原因となる生体防御反応の連鎖です。
臨床現場において関節水腫を引き起こす代表的な疾患は、以下の4つに大別されます。
1. 変形性膝関節症
加齢や過度の負荷によって関節軟骨がすり減り、剥がれ落ちた軟骨の微小な破片が滑膜を刺激して慢性的な炎症を引き起こします。国内の潜在患者数は2,500万人を超えると推計されており、中高年層における膝水腫の圧倒的多数を占めています。
2. 半月板損傷による膝の腫れ
スポーツ時の激しい回旋ストレスや、加齢に伴う組織の変性によって半月板が断裂すると、関節包内で内出血や強い急性炎症が発生します。特に若年層のアスリートや肉体労働従事者に多く見られる病態です。
3. 関節リウマチに伴う膝の水
自己免疫異常により、滑膜組織そのものが攻撃されて増殖し、激しい炎症と水腫を繰り返します。両側の多発関節炎を伴うケースが多く、早期に適切な抗リウマチ薬による全身管理を行わなければ、軟骨や骨の破壊が急速に進行します。
4. 痛風・偽痛風(結晶性関節炎)や細菌感染
尿酸結晶やピロリン酸カルシウム結晶が沈着して爆発的な炎症を起こす病態です。また、傷口や血流を介して細菌が関節内に入り込む「化膿性関節炎」は、放置すると数日で関節が破壊される緊急疾患であり、激痛や高熱を伴う場合は即座の精密検査が求められます。