フランスサッカー界に激震が走ったのが、長年レ・ブルーの「攻守のコンパス」として君臨したアントワーヌ・グリーズマンの代表引退でした。国際Aマッチ137試合44ゴールを記録し、ピッチ上のあらゆる局面で黒子役からゲームメイクまでを一手に引き受けていた司令塔の離脱は、戦術的な再設計を余儀なくさせる重大局面となりました。
当時、現地メディア『レキップ(L'Équipe)』をはじめとする報道各社は「フランス代表の構造的危機」と報じました。しかし、就任10年以上の長期政権を築くディディエ・デシャン監督は、感傷に浸ることなく即座に現実的なアプローチを選択しました。従来の「グリーズマンを経由するタスク集中型の攻撃」から、「中盤のフィジカル強度と両翼の圧倒的な個の打開力で押し切るコレクティブな速攻」へと舵を切ったのです。
この戦術転換で台頭したのが、バイエルン・ミュンヘンで覚醒したマイケル・オリーズや、左サイドで驚異的な突破力を誇るブラッドリー・バルコラです。デシャン監督は記者会見で「過去の実績に依存することはない。我々には異なる特長を持った規格外のタレントが控えている」と語っており、単一の司令塔に頼らない分散型アタックへと見事なシフトチェンジを成功させました。