そもそも男性が髪を左右二つに結ぶスタイルは、歴史的にも創作の世界でも極めて限定的な役割を背負わされてきました。ピクシブ百科事典の「ツインテ男子」解説にも記されている通り、従来の創作物においてこの髪型は「現代劇では高確率で女装、あるいは男の娘」という極めて特異な属性として扱われてきました。『暗殺教室』の潮田渚のように中性的な魅力を持つキャラクターや、古代の「角髪(みずら)」をモチーフにしたファンタジー設定などが代表例です。ウェブ上でも、noteで熱心なファンが男性ツインテールキャラクターの情報を募るアーカイブ企画が立ち上がるなど、一部の熱狂的な愛好層によって大切に育まれてきた文化でした。
この二次元発祥のアイコンが三次元のリアルなトレンドへと跳躍した決定的な契機は、近年の男性アイドルカルチャーとSNSの共鳴にあります。象徴的だったのが、TikTokの「#ツインテール男子」タグで爆発的な反響を呼んだ男性トップアイドルの動画です。なにわ男子の藤原丈一郎さんと大西流星さんによる「丈りゅちぇ」コンビが、ライブ配信やメイキング映像で仲良くツインテール姿を披露し、「アイドルと言えばツインテール」「アイドルたるものまつ毛が命」といった軽妙な名言とともにファンを熱狂させた現象は、大きな転換点となりました。
ヘアサロンの予約ポータル大手「ホットペッパービューティー」が保持する2580万点以上のスタイルデータを見ても、ツインテールや編み込みの検索頻度は女性のみならず中性的なメンズ層からも上昇傾向にあります。かつて「異端のコスプレ」だったスタイルは、アイドルが見せる親しみやすさと遊び心、そしてTikTokにおける「映え」を獲得するための強力な表現ツールへと脱皮を遂げたのです。