この事件を巡る法的な最大の争点は、世間一般の感覚と刑法の文言解釈の間にある「大きなズレ」にありました。ネット上では「なぜ殺人罪が適用されないのか」「なぜこれほど明白な悪質行為なのに裁判の差し戻しなどという遠回りが起きたのか」という疑問が多く投げかけられました。
当時の自動車運転処罰法における「危険運転致死傷罪」は、条文上「走行中の自動車の運転」を前提として作られていました。しかし本件の死亡事故は、萩山さんの車が「完全に停止した後」に後続のトラックが突っ込んだことで発生しています。「止まっている状態」に対して走行を前提とする危険運転罪を適用できるのか否かについて、法学者や実務家の間でも激しい議論が巻き起こったのです。
裁判所は最終的に、「時速100キロを超える追跡から停車に至る一連の妨害行為は密接不可分であり、高速道路の追越車線上に無理やり停車させる行為そのものが、後続車との衝突事故を引き起こす極めて高い危険性を孕んでいる」として、因果関係を肯定しました。この画期的な司法判断が、現在のあおり運転取り締まりの法的な礎となっています。