私生活を公にしなかった渡瀬恒彦さんですが、現場で見せる佇まいの端々に、父親としての深い愛情と厳格さが滲み出ていました。
2015年に胆管がんが発覚し、闘病生活に入りながらも『警視庁捜査一課9係』の撮影現場に立ち続けた晩年の渡瀬さん。激しい抗がん剤治療と放射線治療を受け、体重が急激に落ちる過酷な状況下でも、現場では一切弱音を吐きませんでした。その壮絶な姿を陰で支え続けたのが、再婚以来40年近く連れ添った妻・智恵子さんと、立派に成人した二人の子供たちでした。
テレビ朝日のドラマ関係者は次のように語っています。「渡瀬さんは病室や自宅で、息子の暁彦さんが演出したTBSのドラマをチェックしていました。『あいつのカット割りはまだまだ甘いな』と照れ隠しに笑いながらも、その表情は紛れもなく父親の誇りに満ちていました。現場の厳しさを誰よりも知る渡瀬さんだからこそ、同じ映像の世界で苦闘する息子を一人の表現者として認めていたのだと思います」。
また、妻の智恵子さんに対しても深い感謝の念を抱き続けていました。元モデルで聡明な智恵子さんは、大スターの妻でありながら決して前に出ず、渡瀬さんの体調管理や食事療法を完璧にサポートし続けました。渡瀬さんが亡くなった際、自宅前で取材陣に対応した親族の姿は凛としており、長年築き上げてきた家庭の絆の強さが世間に深い感銘を与えました。