SNSやクーポンサイトで時折見かける「1回19,800円」「モニター限定半額」といった極端な低価格プラン。なぜこれほどまでに安く提供できるのか、その構造的な裏側には明確な理由が存在します。
第一の理由は、施術者が技術習得途中の練習生(研修生)であるケースです。クリニック側は「症例実績の収集」や「スクール卒業生の実践トレーニング」を目的としており、通常料金よりも大幅に割り引いて患者を募ります。モニター条件として「顔写真(目元や全顔)のSNS・Webサイトへの無期限掲載」「術後のアンケート提出」「施術者への細かいデザイン要求の制限」などが課されるのが通例です。アートメイクは一度色素を注入すると、レーザー除去や切除を行わない限り数年間は消えません。技術の未熟な担当者によって左右の高さがズレてしまったり、毛並みが滲んで黒い塊のようになってしまったりした場合、除去手術には何十万円もの費用と痛みが伴うという残酷な現実を直視する必要があります。
第二の重大なリスクは、法的なグレーゾーン、あるいは明確な違法施術を行う「無資格サロン」の存在です。日本国内において、針を用いて人体に色素を注入する行為は、医師法第17条におけるアートメイク医療行為に該当します。医師が自ら施術を行うか、または医師の直接的な管理・指示のもとで「看護師免許」を保有する医療従事者が施術を行わなければ違法(無免許医業)となります。
エステサロンや民間のまつ毛パーマ店などで「眉タトゥー」「アートメイク」と称して低価格で提供している無資格業者では、感染症予防の滅菌対策が不十分であったり、海外から個人輸入された安全基準を満たさない安価な染料(有害重金属を含むインク)が使用されたりする事故が報告されています。厚生労働省や国民生活センターも度重なる注意喚起を行っていますが、トラブルが起きても医療機関ではないため適切な処置やアレルギー対応が受けられません。
なお、「眉毛アートメイクは保険適用されるのか」という疑問を持つ方もいますが、保険適用の真相として、容姿を整えるための美容目的の施術は100%「自由診療(全額自己負担)」です。先天性の無毛症や抗がん剤治療による脱毛、外傷による眉の欠損などに対して医療補助的アートメイクを実施している大学病院や先進的クリニックも極めて稀に存在しますが、一般的な美容クリニックにおける施術で公的医療保険が使えることは一切ありません。