寿命が延伸した現代においても、医療従事者や支援者が常に警戒を怠らないのが、プラダー・ウィリー症候群の死因となる複合リスクです。成人期以降の主な死因は、一般的な悪性腫瘍(がん)などではなく、肥満に起因する代謝性・心血管性疾患、および摂食行動に伴う偶発事故が占めています。
特に危険視されるのが、呼吸障害と突然死の連鎖です。重度の肥満が進行すると、胸壁や腹壁の脂肪沈着によって肺の換気量が極端に低下する「肥満低換気症候群(ピックウィック症候群)」に陥ります。さらに高炭水化物食の多量摂取による二酸化炭素の体内貯留が重なると、夜間に高炭酸ガス血症から不整脈を誘発し、朝方に心肺停止状態で発見されるケースが今なお警鐘を鳴らされています。
次に、プラダー・ウィリー症候群における肥満と合併症の代表格が、2型糖尿病リスクの急激な顕在化です。インスリン分泌能の低下と高度のインスリン抵抗性が重なり、血糖コントロールを失うと短期間で高浸透圧高血糖状態(非ケトン性高浸透圧性昏睡)に陥り、多臓器不全に至る危険があります。
さらに見逃せない盲点が「消化器系の急性破綻」です。PWS患者は痛覚が鈍く(疼痛感受性の低下)、通常は激痛を伴う胃腸炎でも痛みを訴えません。さらに「嘔吐反射が著しく鈍い」という身体的特徴を持ちます。このため、一度に大量の食物を隠れ食い・過食した際、胃の内容物を吐き出すことができず、急性胃拡張から胃壁の壊死・破裂(胃穿孔)、急性腹膜炎を起こして急死する事例が世界的に報告されています。咽頭部の筋力低下と早食いが重なることによる「食物の気道誤嚥(窒息)」も、常に背中合わせの致死的リスクです。