合コン通いを繰り返し、「年収1000万以上のエリート医師か実業家」を条件に掲げていたまつざか先生ですが、生涯で唯一心から愛した男性は、派手さとは無縁の誠実な接骨院の医師、行田徳郎(ぎょうだ とくろう)でした。
階段から転落して骨折した梅が通院先で出会った徳郎さんは、骨の化石を愛する風変わりで温厚な好青年。見栄を張る必要のない徳郎さんの前で、梅は初めて素直な自分をさらけ出し、二人は深い絆で結ばれました。しかし、徳郎さんが長年の夢であった新種恐竜の化石発掘調査のため、南米ボムボコリン領へ旅立ったことから、物語は漫画史に残る過酷な展開を迎えます。
ここで特筆すべきは、原作コミックスとテレビアニメ版で結末が大きく分岐している点です。
原作コミックス47巻において、徳郎さんは現地で発生した無差別爆弾テロに巻き込まれ、命を落とします。ギャグ漫画の枠を完全に逸脱したこの展開に、当時の読者コミュニティは凍りつきました。最愛の人を失ったまつざか先生は深い絶望からアルコールに溺れ、自暴自棄になって自ら命を絶とうとする極限状態まで追い詰められます。しかし、徳郎さんが生前に遺していた「君の仕事は子どもたちに夢を与える素晴らしい仕事だ。梅さんの笑顔は僕の宝物でした」という手紙と、しんのすけをはじめとする周囲の支えによって、彼女は再び保育士として生き直す決意を固めました。
一方、テレビ朝日系で放送されているアニメ版では、金曜夕方・土曜夕方というファミリー向け放送枠の性質上、あまりに過激で悲痛なテロ描写はカットされました。徳郎さんは海外へ旅立ったまま現在も消息が途絶えているか、あるいは関係が保留された状態で描かれており、まつざか先生の「婚活がうまくいかないキャラ」としての日常が維持されています。この大幅な改変は、アニメのトーンを守るための苦渋の決断であったと同時に、原作が内包していた「人間の喪失と再生」というテーマの深さを際立たせる結果となりました。