完全に途絶えたと思われていた伝統に再び光が当てられたのは、2004年のことでした。きっかけは、地元の若手クリエイターや住民有志が立ち上げた「鯛車復活プロジェクト」です。代表者たちが町の古老を訪ね歩き、物置の奥に眠っていた埃まみれの古い鯛車を発掘。わずかに残された寸法図や白黒写真を頼りに、分解・構造解析を繰り返す気の遠くなるようなリバースエンジニアリングが始まりました。
「自分たちが子どもの頃に見たあの温かい光を、もう一度町の子どもたちに見せたい」――立ち上げメンバーが当時の地元紙インタビューで語ったこの純粋な動機は、かつて鯛車職人だった高齢者の心を動かします。技術指導を受けながら、失われた骨組みの曲げ技法や絵付けのタッチを一つひとつ復元。単なる展示物としての保存にとどまらず、子どもたちが実際に手にして遊べる「生きた玩具」としての再興を目指した点が、このプロジェクトの決定的な強みでした。
活動は学校教育やワークショップとも連動し、地域のコミュニティを巻き込みながら拡大しました。現在では夏の風物詩として「巻夏まつり」などの場で数百台の鯛車が夜の通りを練り歩くパレードが定着しており、途絶えた伝統工芸が住民主導で完全に復活を遂げた極めて稀有な成功事例として、全国の地域再生関係者からも高い評価を得ています。