フランス革命期の風刺画において、最も過激かつ執拗な標的となったのが、国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットでした。絶対君主制の下で「神の代理人」として神聖視されていた国王夫妻を、民衆はいかにして断頭台へ送る対象へと引きずり下ろしたのか。そこには徹底的な「デサクラリゼーション(脱神聖化・神聖の剥奪)」の視覚工作がありました。
1791年6月、国王一家がオーストリアへの逃亡を企て失敗した「ヴァレンヌ逃亡事件」を境に、風刺画のトーンは決定的に変貌します。国王は国家を裏切った卑怯者として描かれ、その姿は肥満した「豚」や「貪欲な怪物」「酒樽」として戯画化されました。人間としての尊厳すら奪い去るこのグロテスクな動物化表現は、かつて敬愛を集めた国王の身体から王権の不可侵性を完全に剥ぎ取る心理的効果をもたらしました。
さらに悲惨だったのはマリー・アントワネットです。オーストリア出身の「異邦人」であった彼女は、贅沢三昧で国庫を空にした張本人として、異常なまでの悪意を浴びせられました。現存する当時のパンフレットや風刺画には、彼女が巨大な羽と鉤爪を持つ怪鳥ハルピュイア、あるいは不貞を繰り返す雌豹として描かれたものが無数に残されています。
歴史学者ロバート・ダーントンがその著作『フランス革命前夜の地下出版』で克明に論証したように、パレ・ロワイヤルの地下印刷所から非合法にばらまかれた低俗な風刺画と誹謗中傷文書(リベル)は、王妃を「国家に巣食う淫乱な怪物」へと仕立て上げました。社会の不満を一心に集めるスケープゴートが視覚的に完成した瞬間でした。