制作環境がデジタルへと急速に移行する現代の漫画界において、小畑健の存在感はより一層際立っている。もちろん彼自身も新たなデジタルツールを柔軟に取り入れているが、その根底にあるのは徹底したアナログ的手わざへの敬意だ。
原画展などで披露される生原稿を目にした者は、ホワイトの修正跡の少なさや、肉眼でしか確認できない極細のハッチングに息をのむ。紙とインクの摩擦が生み出す微細なブレすらも表現の一部として手懐ける職人技。それは、画面の向こう側の読者に「生身の人間の熱」を届けるための執念に他ならない。
後進の漫画家やイラストレーターたちが口を揃えて小畑をリスペクトするのは、絵の巧さだけでなく、作品ごとに常に自身のスタイルを刷新し続けるストイックな姿勢にある。彼は決して過去の成功に安住しない。