植物の正確な同定において、花だけに頼るのは危険です。開花前の状態や花が終わった後でも確実に識別できるよう、栄養器官(葉・偽鱗茎)と生殖器官(花器)のディテールを深掘りします。
シランの最大の特徴は、長さ20〜30cm、幅3〜5cmほどに成長する「アコーディオン状の縦ひだを持つ長楕円形の葉」です。ラン科植物の識別方法において、この平行脈に沿った深い折り目は「プリーツ葉」と呼ばれ、葉脈に沿って規則正しく波打つ触感が指先で明瞭に確認できます。
さらに花の構造に着目すると、シランの花びらは6枚(外花被片3枚、内花被片3枚)で構成され、下方に位置する花弁が袋状・樋状に変形した「唇弁(しんばん)」となっています。この唇弁の内側には5〜7本の白い隆起線(ひだ状の突起)が走り、縁が細かく波打っています。この立体的な隆起線こそが、ハチなどの訪花昆虫を花粉塊へと誘導するためのシラン固有のサインです。
地表付近を観察すると、扁平な球状の偽鱗茎(バルブ)が横に連なっており、ここから強靭な根を張って株を広げる性質を持ちます。この地下茎の形態も、アヤメ科の根茎やユリ科の球根と見分ける重要な鑑別点です。