八虎たちの才能を最短距離で開花させた立役者が、東京美術学院(予備校)の油画科講師・大葉真由です。大葉先生の指導法は、現代のビジネスや人材育成の観点からも極めて高度な「認知的コーチング」に基づいています。
大葉先生は生徒に答えを教えるのではなく、「あなたが今描きたいものは何か」「なぜその構図にしたのか」という問いを投げかけ続けます。生徒の心理的安全性を担保しながら、自己開示の限界を突破させるそのメソッドは、八虎が短期間で自らの「武器」を見つけ出す決定打となりました。
藝大入学以降の物語では、新たな怪童たちが続々と登場しています。中でも絶大な存在感を放つのが村井八雲です。予備校時代は無名に等しかったものの、北海道の大自然で培われた規格外の生命力と、大型キャンバスを力でねじ伏せる圧倒的な筆致で藝大の教授陣を唸らせます。藝大編では、受験という共通ルールを失った表現者たちが、「現代アートとは何か」「自分は何を売るのか」というより過酷な市場原理と自己存在の戦いに身を投じています。