二人の関係が法的な形をとったのは、出会いから17年が経過した2013年5月のことでした。高倉健さん82歳、小田氏49歳の時に養子縁組届が提出され、彼女は正式に「養女」となります。名女優・江利チエミさんとの離婚後、生涯独身を貫くイメージを守り続けた彼が、なぜ入籍(再婚)ではなく養女縁組という手続きを踏んだのか。そこには極めて現実的な3つの理由がありました。
第1の理由は、「高倉健というパブリックイメージの死守」です。ファンや映画関係者が抱く「不器用でストイックな孤高の男」という幻想を壊さないため、世間に公表される「再婚」という形を避けたと伝えられています。戸籍上親子となる養子縁組であれば、対外的に発表する義務はなく、秘密裏に家族関係を構築できました。
第2の理由は、医療現場における同意権・身元引受人の確保です。高齢を迎えた健さんが病に倒れた際、内縁の妻という立場では手術の同意や病状告知の場で法的な壁に突き当たります。確固たる家族の立場を法的に付与することが急務でした。
そして第3の理由が、全財産の承継に関する法的手続きです。民法上、養子は実子と同等の第一順位の法定相続人となります。健さんには実子がおらず、親も他界していたため、養子縁組を行わなければ法定相続人は実妹などの兄弟姉妹に移ります。彼女を養女に迎えることで、血縁者へ財産が分散することを防ぎ、生活を共にした彼女へすべての権限を集中させる布石を打ったのです。