実質的な絶縁生活に入った後、数年または十数年が経過してから突然直面するのが「行政からの金銭的要請」と「死後の遺産問題」です。これらを放置すると、過去のトラウマが突然引き戻されることになります。
生活保護の「扶養照会」を合法的に拒絶する基準
親が経済的に困窮して生活保護を申請した際、福祉事務所から子どもに対して「親を経済的・精神的に援助できないか」という書面(扶養照会)が届くことがあります。民法877条1項は直系血族間の扶養義務を定めていますが、これは自らの生活を落としてまで親を養う義務(引取扶養義務)ではなく、余力がある範囲での支援を求める「生活扶助義務」に過ぎません。
さらに、厚生労働省の保護課長通知では、以下のようなケースについて「扶養照会を行うことが適当でない者」として明確に規定されています。
- 過去に親から児童虐待や著しい精神的暴力を受けていた経緯がある場合
- 親からDVやストーカー行為を受けて避難している場合
- おおむね10年程度にわたって音信不通など交流が完全に途絶えている場合
照会通知が届いた場合は、パニックになって無視するのではなく、所定の回答書に「過去の虐待および長期間の断絶により精神的苦痛が著しく、金銭的・精神的援助は一切不可能である」旨を明確に記入して返送します。これにより、福祉事務所から強制的に金銭を徴収されたり、親に居場所を教えられたりすることは法的にありません。
親の死亡後に待ち受ける「相続放棄」のタイムリミット
法的な親子関係が継続している以上、親が他界した瞬間、子どもは第一順位の法定相続人となります。絶縁状態であっても、親が遺した消費者金融の借金、未払いの医療費、老朽化した空き家の解体義務などはすべて子どもに承継されてしまいます。
この危険を完全に断ち切る唯一の手段が、家庭裁判所における「相続放棄申述」です。極めて重要なのは、「自己のために相続の開始があったことを知った時(親の死亡を知った日)から3か月以内」に管轄の家庭裁判所に申し立てを行わなければならないという点です。警察からの孤独死の連絡や、債権者からの督促状で死亡を知ったその日から時計の針は動き始めます。戸籍謄本を取り寄せ、速やかに手続きを完了させることが不可欠です。なお、遺品整理として親の預金を使ったり部屋を片付けたりすると「単純承認」とみなされ、放棄が認められなくなる恐れがあるため厳禁です。