ネット上の健康情報やSNSでは、「脱水にはとにかく塩分と水分を同時に補給せよ」「経口補水液(OS-1など)を大量に飲めば安心」という短絡的なアドバイスが散見されます。しかし、この一般論を高張性脱水にそのまま当てはめるのは極めて危険な誤解です。
高張性脱水は、すでに体内の「ナトリウム濃度が高すぎる」状態です。ここに塩分を多く含むスポーツドリンクや経口補水液を無理に大量摂取させると、血清ナトリウム濃度がさらに押し上げられ、細胞外液の浸透圧が上昇して細胞内脱水に拍車をかけてしまいます。意識が清明で経口摂取が可能な軽度の高張性脱水であれば、第一に補給すべきなのは「真水」や「カフェインの入っていない麦茶」などの純粋な水分です。
また、もうひとつの深刻な誤解が「脱水だからすぐに点滴で元に戻せば治る」という治療スピードへの認識です。一般の感覚では、失われた水分を一刻も早く急速輸液で満たすことが最善に思われがちですが、高張性脱水の急速な補正は医療における最大の禁忌のひとつとされています。これには、脳の緻密な自己防衛メカニズムが深く関係しています。