消費者が最も直面する疑問は、「とう立ちした野菜は果たして食べられるのか」という点に尽きる。現場の結論を明確に言えば、「毒性は一切ないため安全に食べられるが、野菜の種類によって食味の天国と地獄が極端に分かれる」というのが事実だ。
花茎を伸ばすエネルギーは、それまで葉や根、球部に蓄えられていた糖分やアミノ酸、水分から一気に吸い上げられる。その結果、野菜本来の可食部では繊維のリグニン化(木質化)が進み、水分が抜けてスカスカになる。大根であれば「スが入る」現象が発生し、スポンジのような食感に劣化する。また、レタスをはじめとするキク科野菜では、とう立ちに伴って防御物質であるポリフェノール類や「ラクチュコピクリン」が急増し、強烈な苦味とエグみが生じるため、生食には到底耐えられなくなる。
一方で、アブラナ科の葉菜類(白菜、小松菜、チンゲンサイ、ブロッコリーなど)に関しては話が180度異なる。花を咲かせる直前の柔らかい蕾と若い茎は、春を告げる季節の美味「菜花(なばな)」そのものであり、凝縮された甘みと心地よいほろ苦さを堪能できる。とう立ちを一律に「失敗」と切り捨てるのではなく、どの野菜が劣化し、どの野菜が新たな旬を迎えるのかを正しく見極めるリテラシーが欠かせない。