兵庫県の公立高校入試を理解する上で、避けて通れないのが「複数志願選抜制度」と「歪な内申点計算式」です。この構造を正確に把握していないと、出願戦略で取り返しのつかない悲劇を招くことになります。
まず押さえるべきは、合否判定に用いられる総得点(500点満点)の内訳です。当日の学力検査(5教科各100点=計500点)は0.5倍の250点満点に換算されます。一方、中学校から提出される調査書(内申書)の評定得点も250点満点です。驚くべきはその計算式にあります。
- 主要5教科(国・数・英・理・社):各5段階評価 × 4倍 = 計100点満点
- 実技4教科(音・美・保体・技家):各5段階評価 × 7.5倍 = 計150点満点
主要5教科の満点が100点であるのに対し、実技4教科だけで150点ものウエイトを占めています。数学や英語で「5」を取っても20点にしかなりませんが、音楽や美術で「5」を取れば1教科だけで37.5点。主要教科の評定「1」の差(4点分)を取り戻すには、当日の学力検査で8点(換算前)多く得点しなければならず、実技教科で「3」から「5」へと2段階引き離された場合(15点差)、当日試験で実に30点分ものリードを奪う必要があります。
さらに、第1志望校に与えられる「第1志望加算点」が選抜を一層複雑化させます。第1学区(神戸・芦屋・西宮など)では25点、第3学区(明石・加古川など)でも25点が第1志望の総得点に上乗せされます。この加算点の存在により、第2志望として安全校に出願してくる上位校不合格組に対し、第1志望で出願した中堅層が防御壁を築くことができる反面、第1志望で無謀なチャレンジをして敗退した生徒は、加算点のない状態で第2志望の激戦区へと押し流されるリスクを背負うことになります。