インターネット上の掲示板やSNSでは、緊急通報に関する根拠のないデマや誤認が散見されます。それらを検証し、命に関わる誤解を是正しておかなければなりません。
第一の誤解は、「スマートフォンの位置情報(GPS)機能をオフにしていると、消防に居場所がバレない」という言説です。これは明確な誤りです。日本のキャリアが販売する全端末および国内認証(技適)を受けた端末には、緊急通報位置通知の強制作動プロトコルがOSレベルで組み込まれています。プライバシー設定で位置情報を完全オフにしていても、119番や110番を発信した瞬間に端末のGPSチップがバックグラウンドで強制起動し、位置データが送信されます。ただし、超高層ビルの上層階や地下街にいる場合、電波遮蔽によってGPS精度が著しく低下し、半径数百メートル規模の誤差が生じる弱点は残されています。
第二に警戒すべきは、119番がつながらないときの原因です。データ通信専用SIMを契約したスマートフォンや、月額料金の滞納等で回線契約が完全に切断された端末では、電波ピクトが立っていても119番発信は弾かれます。欧米の一部諸国では「SIM未装着端末からの緊急コール(eCall/911)」を法制化していますが、日本国内では虚偽通報やいたずら電話の抑止、発信者特定の観点から、アクティブな通話回線契約のない端末からの緊急通報は接続されない仕組みになっています。
第三に、近年急増しているのが最新スマホやスマートウォッチの「衝突事故検出」「転倒検出」による自動発信トラブルです。ポケットや鞄の中での画面誤タッチを含め、意図しない間違い電話への対処法を知らない通報者が混乱を引き起こしています。間違えてダイヤルしてしまった際、もっともやってはならない行為は「慌てて即座に電話を切ること」です。
指令センター側では、無言で切断された着信を「強盗に襲われて通話を遮断された」「通報直後に意識を失って倒れた」と判断せざるを得ません。安全確認のため即座に折り返し発信を行い、応答がない場合は警察へ通報位置を照会し、パトカーや救急隊が現場へ緊急臨場する大掛かりな捜索事案に発展します。もし誤発信してしまった場合は、そのまま通話を切り落とさず、出た指令員に対して「すみません、間違えてボタンを押しました。怪我や火事ではありません」と一言伝えてから通話を終了してください。これだけで無駄な出動リソースの浪費を100%防ぐことができます。