2012年4月にアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってた』で鮮烈なメジャー進出を果たしたクリープハイプが、同年10月3日に満を持してリリースしたのがメジャー1stシングル『おやすみ泣き声、さよなら歌姫』でした。当時の音楽シーンにおける下北沢系ギターロックの枠組みを軽々と超え、オリコン週間チャートでも上位に食い込むなど、バンドの存在を広く世に知らしめた決定打です。
当時の音楽雑誌のインタビューや尾崎世界観の自著・エッセイなどで克明に語られているのは、アンダーグラウンドからメジャーの荒波へと漕ぎ出す瞬間に抱いていた強烈な焦燥感と、ファンや音楽関係者との距離感に対する違和感でした。タイトルにある「歌姫」という象徴的な言葉。それは単なるフィクションのヒロインではなく、商業化される音楽そのものや、ステージとフロアの間で揺れ動く「愛憎入り混じる共依存関係」の暗喩であるとも受け取れます。
「アンコールはどうする」「アルコールはどうする」と韻を踏みながら投げかけられる日常の乾いたフレーズから、「でも君は泣いていたんだね」と個の感情の深淵へ雪崩れ込むダイナミズム。この詩世界の緊張感が、後述する緻密なコード進行のテンション感と完全に同期しています。