本来は土佐の土着表現であったこの言葉が、なぜ日本全国の酒飲みに知れ渡るに至ったのか。その決定的な契機となったのが、1990年代中盤に展開されたキリンラガービールの高知限定CMおよびポスター戦略です。
当時、日本のビール市場はアサヒ「スーパードライ」の台頭により、歴史的なシェア激変期を迎えていました。全国各地で苦境に立たされたキリンビールでしたが、全国屈指の酒豪県である高知県だけは、異例の事態が巻き起こります。当時のキリンビール高知支社営業チームが、土佐人の気骨に火をつけるべく打ち出した起死回生のスローガンこそが、「たっすいがは、いかん!」でした。
苦味とコク、ズシッとした飲みごたえを誇るキリンラガーの原点を、土佐人の「水っぽくて薄いビールなんざ飲めるか」という気質に完全合致させたのです。路面電車を丸ごと広告でラッピングし、居酒屋の軒並みに短冊を配り倒したこのキャンペーンは、地元経済界と酒飲みたちの心を鷲掴みにしました。その結果、高知県内におけるキリンのシェアは驚異の70%超を維持・奪還するという、マーケティング史に残る伝説を打ち立てたのです。
地元新聞や当時の関係者証言によると、県外から訪れたビジネスマンや観光客が「あの強烈なポスターは何だ」と持ち帰り、口コミやメディアで拡散されたことが、現在の知名度を築く発火点となりました。