医療機関で患者の退院支援を担う医療ソーシャルワーカー(MSW)やケアマネジャーへの取材では、家族の初動の遅れに対する切実な証言が寄せられています。
都内総合病院の退院調整看護師は、現場の切迫感を次のように明かします。
「ご家族から『退院日が来週に決まったので、今日から申請したい』と相談されるのが最も厳しい局面です。そこから調査員が病棟を訪れ、審査会を経て結果が出る頃には、退院から1カ月以上が経過してしまいます。結局、ご家族が交代で有給休暇を消化して介護に張り付くか、高額な自費サービスで繋ぐしかなくなります」
また、介護関係のコミュニティや知恵袋等の当事者投稿を検証すると、共通する後悔の声が浮かび上がってきます。
「父が自宅で転倒した際、『まだ大丈夫』という本人のプライドを尊重して申請を見送った。その3カ月後に再転倒して大腿骨を骨折。結局、最初につまずいた段階で地域包括支援センターへ繋いでおけば、住宅改修で手すりをつけて骨折自体を防げたはずだった」(50代・会社員長男の手記より)
介護現場の観察から明らかなのは、「家族だけで何とかしようと抱え込む時間」こそが最大の損失を生むという事実です。本人が要介護認定を嫌がる場合でも、相談窓口である地域包括支援センターと接触を持つこと自体に本人の同意や申請は必要ありません。外堀を埋める情報収集こそが、破綻を回避する防波堤となります。