「なぜ広島市内は雲一つない快晴なのに、広島空港だけが深い霧に閉ざされているのか」。利用者の間で頻繁に囁かれるこの疑問には、空港の立地と地形が密接に関係しています。広島空港視界不良ニュースが報じられる背景には、特有の気象メカニズムが存在します。
旧広島空港(現・広島西飛行場跡地)が広島市西区の臨海部に位置していたのに対し、1993年に開港した現在の広島空港は、内陸へ約40キロメートル離れた三原市本郷町の山林を切り拓いて建設されました。その標高は331メートルに達します。この高台という地理的条件が、霧の発生において決定的な役割を果たします。
春先(3月〜6月頃)や秋口(10月〜11月頃)にかけて、晴天で風が弱い夜間には地表の熱が上空へ逃げる「放射冷却」が強まります。そこに瀬戸内海側から流れ込む湿った空気が山肌に沿ってせり上がり、山頂付近で急速に冷却されて飽和状態となり、濃密な「放射霧」や「移流霧」へと姿を変えます。平野部から見れば単なる低層の雨雲や薄曇りに見える気象現象が、標高300メートルを超える空港敷地においては、滑走路全面をすっぽりと包み込む「視界数十メートル」の壁となって現れるのです。