高度成長期を経て平成の30年間を駆け抜けた日本社会では、「効率化」「コストカット」「株主利益の最大化」が絶対正義とされてきました。しかし、実質賃金の伸び悩みや非正規雇用の拡大、地域社会の崩壊に直面する中で、現場で汗を流す企業人や市民層から強い違和感の声が噴出しています。
リーダーシップ育成の総本山である松下政経塾が発信した論考「『経世済民』~見えない価値を生かして」では、創業者・松下幸之助の思想を引きながら、目先の損益計算書に表れない「人づくり」「信頼」「文化」といった見えない価値こそが本来の経済活動の核であると強く提起されました。この問題意識は今、地方創生に取り組む起業家やサステナビリティ部門の現場に確実に波及しています。
SNSやビジネス系コミュニティの声を定点観測すると、「売上目標を追うだけの仕事に心が摩耗した」「自社のビジネスは誰を救っているのか見えなくなった」という現役世代の葛藤が目立ちます。利益を出すこと自体を否定するのではなく、「その利益は何のためにあるのか」という根源的な問い。そこに、2000年以上前の「民を済(すく)う」という直球のメッセージが、力強い羅針盤として突き刺さっているのです。