大脇幸志郎氏の経歴を紐解くと、単一の診療科にとどまらない重層的な現場経験が浮かび上がります。
大学卒業後、初期臨床研修を経て精神科の診療に従事。精神医療の現場で「心の苦悩」と「薬物療法の限界や功罪」に直面した経験は、後の医療批評における重要な原体験となりました。さらに、高齢者医療の現場である療養病床や訪問診療(在宅医療)にも携わり、超高齢社会における終末期医療の現実や、過度な医療介入が高齢者の生活の質(QOL)を損ねてしまうジレンマを肌で痛感します。
加えて、大脇氏には医療現場の外で培った編集者・翻訳者としての顔もあります。海外の医学論文や専門書を精緻に読み解き、分かりやすい日本語へと昇華させる語学力と編集感覚は、難解な医学統計やエビデンスを一般読者に向けて明快に翻訳する卓越した発信力のベースとなっています。現場の臨床医としての皮膚感覚と、言論人としてのシャープな論理構成力――この二刀流こそが、大脇氏の唯一無二の強みなのです。