物語後半、シャウアプフの行動原理は「王の護衛」から「コムギの抹殺」へと異常な傾倒を見せます。この暴走の根底にあったのは、プフが抱く独特で歪んだ「忠誠心」でした。
直属護衛軍の3人は、それぞれ王メルエムに対するスタンスが異なっていました。
- ネフェルピトー:王の意思そのものを無条件で肯定し、王が望むなら人間の少女(コムギ)の治療にすら命を捧げる。
- モントゥトゥユピー:戦士としての王に共鳴し、戦いを通じて自らも精神的進化を遂げ、王に付き従う。
- シャウアプフ:自らが理想とする「全種族の頂点に君臨する冷徹で絶対的な暴君としての王」にのみ忠誠を誓う。
プフにとって、盲目の少女・コムギと過ごすことでメルエムが人間的な温情や慈悲の心に目覚めていくプロセスは、「完全無欠であるべき蟻の王が堕落していく悪夢」に他なりませんでした。王が種族の王としての覇道を捨ててしまうのではないかという恐怖から、プフは「王のため」という名目のもと、王自身の意思に反してコムギを暗殺しようと画策します。
小型核兵器の爆心地から救出されたメルエムが一時的に記憶喪失に陥った際も、プフはその好機を利用してコムギの存在を隠蔽し、王が記憶を取り戻す前に彼女を亡き者にしようと奔走しました。王を深く愛するがゆえに王を裏切るという、自己矛盾と狂気の極致がここに描かれています。