ドラマ『VIVANT』で堺雅人氏が演じた主人公・乃木憂助の表の顔は大手商社マン、裏の顔は冷徹に任務を遂行する別班員でした。この設定は完全な創作ではなく、長年語り継がれてきた「自衛隊の影の諜報部隊」のリアルな伝説に色濃くインスパイアされています。
日本は戦後、憲法第9条の制約や平和主義の観点から、アメリカのCIAやイギリスのMI6のような攻撃的・対外的なスパイ機関を公式には保有していません。公式に認められているのは、防衛省情報本部や内閣情報調査室、警察庁警備局、公安調査庁などの分析・防諜を主目的とした組織です。
しかし、冷戦の最前線に立たされていた自衛隊の内部では、公にはできない情報収集活動の必要性が痛感されていました。そこで誕生したのが、自衛隊員としての身籍を一時的に抹消あるいは休職扱いとし、民間企業社員や大使館員になりすまして活動する非公式のヒューミント(人的情報収集)部隊、通称「別班」でした。