命を救う立場にある看護師が、なぜ自ら患者の生命を絶つ凶行に及んだのか。取り調べや公判の中で明らかになった犯人の動機は、医療従事者の倫理を完全に逸脱したものであり、傍聴席や遺族に深い絶望を与えました。
久保木被告は警察や裁判の調べに対し、犯行の引き金となった心理状態を次のように供述しています。
「自分の勤務シフト中に患者が亡くなると、遺族への対応や説明を自分がしなければならず、怒鳴られたり責められたりするのが極度に怖かった。自分の勤務時間外に患者が亡くなるよう時間を逆算して点滴に消毒液を入れた」
ナースステーションで準備されていた未使用の点滴バッグのゴム栓部分に注射器で消毒液を注入し、自分の勤務が終わった後に投与が開始されるよう細工を施すという、あまりに計画的かつ自己保身に特化した手口でした。
精神鑑定では、被告が自閉スペクトラム症(ASD)の特性や抑うつ状態を有していたことが指摘されました。他者との感情的なコミュニケーションに対する極度の恐怖や過剰な適応障害が背景にあったと分析され、裁判における責任能力の有無が最大の争点となっていきました。