長年の視聴者であっても時折混乱するのが「印籠を取り出して悪人を平伏させるのは助さんなのか、格さんなのか」という点です。結論として、あの名場面で印籠を掲げる役割は「格さん(渥美格之進)」が一貫して担当しています。
クライマックスの立ち回りが佳境に入ると、光圀公の合図とともに格さんが懐から三つ葉葵の印籠を取り出し、響き渡る声調で決め台詞を放ちます。
「静まれ、静まれ!静まれぃ!この紋所が目に入らぬか!こちらにおわすお方をどなたと心得る。畏れ多くも前の副将軍・水戸光圀公にあらせられるぞ!」
これに続いて助さんが「一同、御老公の御前である、頭が高い、控え居ろう!」と畳み掛けるのが定番の様式美です。このセリフの分担には、二人の性格設定と役職の差異が綿密に計算されています。
助さん(佐々木助三郎)の本質は「動」であり、剣の腕を頼みに前線で悪党を切り崩す遊撃隊長です。一方の格さん(渥美格之進)は「静」であり、公の身分を証明する証憑を肌身離さず守り抜く護衛隊長兼実務責任者としての役職を帯びています。格さんが重厚かつ堂々と印籠を掲げるからこそ、瞬時に場が静まり返る劇的なカタルシスが生まれます。
なお、全1200回を超える放送の中には、格さんが敵に捕縛されていたり負傷していたりする緊急事態において、助さんが代わりに印籠を出した極めて稀な例外回も存在しますが、基本フォーマットは「印籠=格さん」で統一されています。