英語圏における猛禽類の呼称も、日本語の「ワシ・タカ」とほぼ重なり合う構造を持っています。しかし、その文化的ニュアンスや適用範囲には独自のルールが存在します。
英語では、大型の鷲を「Eagle(イーグル)」、中小型の鷹を「Hawk(ホーク)」と呼び分けます。さらに英語圏では、ノスリ類を「Buzzard(バザード)」、チュウヒ類を「Harrier(ハリアー)」、トビ類を「Kite(カイト)」といったように、より細分化されたグループ名が日常語として定着しています。
シンボルとしての扱われ方にも差があります。アメリカの国鳥であるハクトウワシ(Bald Eagle)や、古代ローマ帝国の軍旗に刻まれたワシのように、「イーグル」は大空の覇者・力・権威の象徴として国家や軍隊の紋章に多用されてきました。対照的に「ホーク」は、鋭い視力(Hawk-eyed)や俊敏な狩猟者、あるいは政治における強硬派(タカ派)の比喩として用いられる傾向があります。
また、日本語の漢字の成り立ち(白川静『字統』等の漢字形態論)を紐解くと、先人たちの猛禽類に対する鋭い観察眼が浮き彫りになります。
- 「鷹」の成り立ち:屋根や家屋を表す「广(まだれ)」に「隹(ふるとり=小鳥)」と「人(あるいは鳥を手なずける手の象形)」が組み合わさった会意文字。人が腕に据えて獲物を追わせる「鷹狩り(たかがり)」の歴史と密接に結びついて成立した字とされます。
- 「鷲」の成り立ち:高い所に就くことを意味する「就(しゅう)」と「鳥」を組み合わせた形声文字。切り立った断崖絶壁や高山の巨木など、人里離れた高所に堂々と巣を構える巨大な鳥の姿を表しています。