本作の真骨頂は、キャラクターたちが交わす骨太で生々しいダイアログ(台詞)にある。教科書的な英語とは真逆の位置にある、ストリートの隠語や脅し、二枚舌の交渉術が凝縮されているのだ。
例えば、ペンギンが相手を揺さぶる際に頻出する「Look at me」(俺を見ろ)という単純なフレーズ一つをとっても、言い回しのトーンや視線の配り方で相手を服従させる威圧感が全く異なる。また、マフィアファミリー内部の裏切りを指す「rat」(裏切り者・ネズミ)や、利権の分配を巡る「take a piece of the pie」といった慣用句が、スクリプトの随所に散りばめられている。字幕を追うだけでは削ぎ落とされてしまう絶妙なニュアンスを原語で拾い上げることにより、登場人物たちの命がけの駆け引きが鮮明に浮かび上がってくる。